「ジェネリック医薬品」とは、正式には「後発医薬品」と呼ばれています。
ジェネリック(generic)は「一般」の意ですが、これらの後発医薬品は商品名ではなく、その有効成分を指す「一般名」で処方されることから、「一般に」このように呼ばれています。
ジェネリック医薬品は、特許が切れた薬を他のメーカーが製造し、販売するものです。
後発の薬品として、新薬に必要な開発費用の部分が不要となり節約できるため、その価格が「先発医薬品の2~8割程度と安く済む」ことが、最大のメリットとなります。
具体的には、病院に行ったとき初診時に渡される問診表に「ジェネリック医薬品を希望します」という欄がありますので、そこにチェックを入れて、患者としての意思を伝えるようにします。記入欄がないようであれば、受付窓口でその旨を伝えるようにしましょう。
では、ジェネリック医薬品が注目されている背景、そして薬としての効果や安全面に問題はないのでしょうか?
最初に発売される新薬、すなわち「先発医薬品」の開発においては研究期間にして10~15年、そして一般に数百億円といわれる莫大な費用がかかるといわれます。
この開発費用を20~25年の「特許権の存続期間」中に回収し、メーカーとしての利益も確保した上で、次の新薬開発につなげなくてはいけないのですから、医薬品の代金は、通常はどうしても高めに価格設定されます。
ジェネリック医薬品は、先発の医薬品と同じ薬物が同じ量含まれ、同じ効果を持つとされます。
安いからといって、決して薬の品質として劣るというわけではありません。
たとえば、先発医薬品と薬物の成分が同じであっても、薬がカプセルや錠剤だった場合に、薬を包むコーティング部分の添加物などが、先発医薬品とは異なる場合があります。
しかしこれらについても、薬の成分が血液中に入っていくことについての試験(生物学的同等性試験)を実施し、その効果を確認したうえで販売されているので、心配にはあたらないとされています。
このようにジェネリック薬は、先発薬と色・形状・味が異なっていても、許されているわけです。
また、ジェネリック医薬品の安全性については、その品質の再評価についての情報が、「日本版オレンジブック」と呼ばれる「医療用医薬品品質情報集」にまとめられ、結果も一般に情報公開されています(インターネットでも、以下の「オレンジブック総合版ホームページ」から確認することができます)。
ただこのジェネリック医薬品、100%いいことずくめ…というわけでもありません。
特許の切れた薬を開発費用の分だけ安く提供できるという仕組みですので、特許の切れていない薬には当然ジェネリック医薬品は存在しないわけです。
また、医薬品の種類は、細かい違いまでカウントしていくと軽く1万品目を超えてしまうほどの膨大な数になりますので、医院や薬局でそのすべてを在庫として持つことは、現実的に不可能です。
仮に在庫があったとしても、用意している在庫数が少なかったり、あっても小分け売りしていない場合もあります。
つまり、患者にとって必要なすべての薬が、「ジェネリック医薬品」として用意されているわけではありません。
またジェネリック医薬品であっても、もともと低価格な錠剤など、先発医薬品との価格差がさほどない場合は、ジェネリック医薬品を選んでもあまり金額的に変わらない場合があります。
現在、国(厚生労働省)はこのジェネリック医薬品の利用を推進していますが、その目的は「国の財政事情の悪化による医療費の削減」にあります。
そもそもこのジェネリック医薬品、数量シェアとしては2013年度時点で46.9%と、いまだ普及の余地を残しています。
政府が2015年6月に閣議決定した骨太の方針では、2018~2020年度にこれを80%まで引き上げることを目標としています。
これが実現すれば、年間約1兆3千億円の医療費の削減につながるものと、国は試算しています。
これまで普及が思うように進んでこなかった背景としては、先発医薬品においても数年ごとの薬価改定時に値下げが行われるために、先発医薬品も時間が経つにつれ価格が下がってきていたことや、これまでジェネリック医薬品メーカーが、医療現場に情報を十分に提供してこなかったために、医師や薬局がジェネリック医薬品の処方に不安感を持っており、慣れ親しんだ先発医薬品を処方していたことなどが、主な理由としてあげられています。
ちなみに、ジェネリック医薬品に関わる厚生労働省の2007年度調査では、患者がジェネリック医薬品を希望しなかった理由として、「先発の医薬品と比べて、患者の自己負担額の差額が小さい(それほど差が無い)」こと、次いで「ジェネリック医薬品に対する不安がある」ことが、最も上位にくる結果となりました。
また、現在ジェネリック医薬品を供給しているのは小資本の医薬品メーカーが多く、品質の良い製品を安定的に供給できるメーカーの数もまだまだ少ない、といわれています。
これらの理由から、ジェネリック医薬品についてはその社会的認知をさらに推進していく必要があり、厚生労働省は現在、そのPRに力を入れているところです。
2006年4月、国はジェネリック医薬品の普及を推進するため、「ジェネリック医薬品に変更することができる場合」の欄に医師が署名することができるように、処方せんの書式を変更しました。
つまり医師がOKを出して患者が希望したならば、薬局でのジェネリック医薬品への変更を、やりやすくしたわけです。
しかしながら、「安かろう悪かろうという」言葉もあるように、患者の側からすると「安い薬だと、その分効果が薄いのではないか」といった漠然とした不安感があるためか、ジェネリック医薬品の普及も、これまではいまひとつの伸びとなっていました。
そのような不安を取り除きジェネリック医薬品の使用割合をさらに高めるべく、国は2008年4月に再び、処方せんの様式を変更しました。
今度は、医師が「後発医薬品への変更不可」という欄に積極的に署名しない限り、患者が希望するなら薬剤師と相談のうえで、ジェネリック医薬品をいわば「お試し期間」として使用できるようにしたのです。
これは、最初に1週間だけお試しとしてジェネリック医薬品を使用し、特に問題は無いということであれば、そのまま使い続けてもらうことができる、というものです。
どうしてもということであれば、先発医薬品に切り替えることもできますが、問題が起きない限り、ふつうはそのまま使い続けるでしょうから、ジェネリック医薬品の普及そのものをうながす効果があるわけですね。
ジェネリック医薬品は患者が安く医薬品を入手できるため、一見いいことづくめのような気がしますが、国家的視点で見ると「新薬開発における日本の国際競争力が落ち、長期的には国や患者のためにならないのではないか」という意見があります。
なぜなら、医薬品メーカーは特許で保護された期間に高い価格で販売してきた先発医薬品の利益を、次の新たな医薬品開発に振り向けてきたわけですが、ジェネリック医薬品ばかりが普及するとこのサイクルが崩れ、先発医薬品にかけた開発コストも回収できなくなるからです。
世の中にはまだまだ、新たに有効な治療薬やワクチンを必要とする病気が沢山あり、これらは長期的に新薬を開発することによって対応していかねばなりません。
しかし、国家として目先の医療費だけを下げることに一生懸命になってしまって、新薬開発によって、将来的な医療の進歩と国民の健康増進をはかっていくという長期的視点を失ってしまうと、社会全体での医療コストがかえって増大することになったり、新たな病気が発見されたときの新薬対応が遅れ、予期せぬ大きな社会的損失を生んでしまうかもしれません。
ジェネリック医薬品の普及が日本よりずっと進んでいる海外、たとえばドイツでは、いまや国内の製薬企業は、自ら新薬の開発を行わないジェネリック医薬品メーカーばかりになってしまっているそうです。
ドイツの国家財政は改善したかもしれませんが、これまでドイツ国内で蓄積されてきた新薬開発のインフラはほとんど無くなってしまったわけですね。
私たち薬の消費者・患者側としては、国の新薬開発力を憂え、あえて高い先発薬を望む…といった行動を、普通はしないですよね。
薬の効能が同じなら、一個人としては価格が安いほうが、経済的に助かりますから。
ただし、国策としてジェネリック医薬品の推進をみた場合、「その方向で一方的に突き進んでいって、本当によいのだろうか?」といった疑問の声があることについては、ひとりの国民として関心を持ち続けていたいところですね。
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